九月六日



 

野路のパンに使用してる小麦のほとんどは
地元の無農薬で小麦を育てている農家さんから直接届く小麦たちです。

気候や栽培方法、その土地の風土。
農家さんによりそれぞれですがどれも愛おしい小麦たち。

お付き合いさせて頂いてる農家さんはみんな本当に懐が深く、ゆりかごのような安心感をいつも頂きます。
何が大丈夫なのかはわからないのだけれど
大丈夫、大丈夫。と思えてくる。。。
少しお話しするだけでも毎回とても勉強になります。

目先のことだけじゃなく
もっと大きなスパンで物事を捉えている
そんな農家さん達の大らかな世界観と時間配分に毎回救われているのかも。

自然を相手にするお仕事、日頃から心が強くいらっしゃるのだなぁ。

 


昔、細々と自宅でパンを焼き始めた頃から、地粉を使って焼きたいという想いがありました。

どうやって地元の小麦を買えば良いかわからず近くの農産物が売っているお店に足を運んではドキドキしながら粉を選んだりしてたなぁ。

長い長いパンの歴史を知ることや、素晴らしいパン職人の方々のパン作りの所作に
駆け出しの私は圧倒されるばかりで、
無理にたくさんのハードルを上げると、パン作りへの意欲が縮こまってしまいそうだったから

お米を研ぐように、糠漬けをかき回すように
そんな身近な感覚で菌と向き合い、パン作り出来たら良いなぁと思ったものでした。

“みじか”というのが当時の私の中でほっとする場所だったのかもしれません。
そしてパン屋さんになってもそのほっとする場所を無くしたくなくなかったのかも。
彼此ずっと、地元農家さんの小麦たちにお世話になっています。

日本の小麦はどちらかというとタンパク質の含有量が少なく
パン作りに必要なグルテンを引き出すのに力不足な子もいます。

私がパン作りを始めた頃は出回ってる小麦の品種は今よりとても少なく、群馬といえば「農林61号」「W8号」が主流だったかな。
(最近ではタンパク質の多い国産小麦も各地で作られるようになりました)

野路のパンはルヴァン種でじっくりと発酵をとります。
生地にはなるべく負担をかけないよう、強い力を加えず手ごねで作っているので、タンパク質控えめの小麦たちは適してるように思います。また発酵を重ねる段階でやはり農薬や除草剤を使わず作られた農家さんの小麦にはたくさんの菌が生きているのを感じてしまう。


農家さんの小麦たちの味わいはとても深く、小麦の水分量や挽き方も含めたらそこには無限の組み合わせがあります。そんな子たちをまとめてパンにするというのは本当に毎回緊張してしまって、、、

粉、水、塩、発酵種 
捏ねて、丸めて、焼く。

という行為そのものはとても単純な作業なのかもしれません。

でも美味しいと思えるものを
うわぁ!と身体が喜ぶパンを
のりしろに畑や土を感じるような力強さを

そんなパンを焼き上げるには私はもっともっとたくさんの経験と感覚を学ばなければならないかと思います。農家さんから届いた小麦をパン焼き人として皆さんにお届けするというのは本当に嬉しいこと。

日々精進してゆきます。